こんにちは。とまとま(@toma_moneykatsu)です。
今回も経済指標の分析を行っていきたいと思います。
今回フォーカスするのは、「CPI(消費者物価指数)」です。
2022年現在、米国では高インフレに見舞われており、インフレ退治のために、FRBは急速な利上げを進めております。
これにより、株価は年初から大きく下落しておりますが、株価のボトムは一体どこになるのでしょうか。
本記事は、あらゆる視点から株価のボトムを探ることを目的としており、これまで株価ボトムシリーズとして、ISM製造業景気指数や逆イ―ルド幅など、さまざまな視点で分析・解説を行ってまいりました。
ご興味がありましたら、ご一読いただきますようお願いします。
CPI(消費者物価指数)とは
まずは、消費者物価指数について、簡単におさらいしておきます。
そもそもは、消費者物価指数とは
消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための統計指標(引用:SMBC日興証券)
英語でいうと、Consumer Price Indexとなり、その頭文字をとって、CPIと呼ばれます。
この指標はインフレ動向を測るもので、生産者物価指数(PPI)と並んで重要なインフレ指標になります。
消費者物価指数は、景気動向を映し出すため「経済の体温計」とも呼ばれ、その結果をもとに各種経済対策がなされています。
2022年現在、このインフレ動向について注目が集まっておりますので、最も重要な指標の一つになっております。
その消費者物価指数には、「総合指数」と「コア指数」が存在します。
総合指数は、すべての対象商品の物価を元に算出される指数で、全体的にどれくらい物価が変動しているのかを確認できます。
一方、「コア指数」は生鮮食品を除いた商品の物価を元に算出されます。
また、コアコア指数というのもあり、これは値動きの大きいエネルギーや生鮮食品を除いた商品の物価を元に算出されます。
CPIにも様々な指数がありますので、頭に入れておきたいですね。
尚、本記事では、総合指数に着目して、分析を行いたいと思います。
過去の高インフレ局面を見てみよう
それでは、過去の高インフレ局面を振り返ってみましょう。
以下の図は、1976年以降のCPI(前年同月比)とS&P500の推移を示しております。

1976年以降で、何度かインフレに直面していますが、その中でも1978年~1982年あたりは、突出していることがわかります。
この頃は、第二次オイルショックの背景としたエネルギー価格の高騰により、ものすごいインフレを引き起こし、このときの消費者物価指数は前年同月比で、最大+14.8%の伸びを記録しました。
2022年のインフレ率の伸びは、この時以来の水準なので、いかに今回のインフレ率が深刻なのかがうかがえます。
以上より、1978~1982年にフォーカスして、分析を行いたいと思います。
当時の状況整理
当時の高インフレから正常化までの流れについて、説明します。
高インフレから正常化までの流れ
①OPECが1978年末から段階的に原油価格の大幅値上げを実施し、インフレ率が上昇
↓
②1979年に起こったイラン革命によりイランでの石油生産が中断となり、原油価格が上昇し、インフレが加速。
↓
③インフレを抑えるべく、当時のFRB議長であるポール・ボルカーは、明確な政策金利の目標を設定せず、銀行から直接マネーを引き上げることで通貨量をコントロールするという金融引き締め政策を実行。この政策により、金利は急上昇し、株式市場はクラッシュし、株価は急落
↓
④政策導入から6か月後にインフレ率はピークアウト
↓
⑤以降も本政策を継続し、導入から3年後にインフレ率+2%まで低下。それと同時に個人消費の落ち込みや失業率の悪化等で景気後退
以上のように、当時はものすごい金融引き締めを行ったことでインフレを抑え込みましたが、その代償として景気後退を招いてしまいました。
当時の株価とCPIの推移は?

原油価格の値上げが始まった1978年からCPIが上昇しはじめ、株価も追随する形で上昇していきました。
1979年8月に、当時のFRB議長であったポール・ボルカーによる強力な金融引き締めによって、株価は急落しましたが、インフレは上昇を続けました。
金融引き締めの効果が表れたのは、政策実行から6か月後であり、インフレはここでピークを迎え、株価は上昇しました。
また、それと同時にFF金利は大きく低下し、株価はさらに上昇しました。
しかし、その後FF金利が急上昇したことで、再度株価は下落しました。
そして、高い金利により個人消費は落ち込み、企業業績も悪化。失業率も徐々に上昇し、ついにはリセッション入りしました。

- インフレピークアウト直後、株価は上昇
- 大幅な利上げによりCPIは徐々に低下
- インフレピークから伸び率+2%まで3年を要した
- 失業率が最大11%まで上昇
- 労働市場の冷え込みでリセッション入り
- FF金利が10%を切ったあたりから、株価は上昇に転じる
わかったこと
40年前と今回で似たような流れとなっていることが分かりました。
- 大幅かつ急速な利上げ
- インフレピークアウト示唆で株価が上昇
- 利下げ期待で金利が低下
- 利下げ期待が剥落し金利が上昇
前述でも触れたように、40年前はインフレピークアウト後にFF金利が低下して、株価はいったん反発しましたが、その後のFF金利の急上昇に伴い株価は下落高い水準で維持され、景気は後退しました。
2022年も高インフレ退治のために、大幅な利上げを続けております。そして、2022年7月のCPIで、インフレのピークアウト期待が高まり、株価は上昇していきました。
また、インフレピークアウト期待から、債券市場では利下げを織り込みに行く動きもみられ、長期金利は低下しました。
しかし、2022年8月のジャクソンホール会議で、パウエル議長が早期の利下げを一蹴したことで、長期金利は上昇し、株価は下落しました。
「大幅利上げ⇒インフレピークアウト示唆で株価が上昇⇒利下げ期待で金利が低下⇒利下げ期待の剥落し金利が上昇」というこの流れは、40年前と同じです。
もし同じような流れになるのであれば、これから更に株価は下落し、景気後退がやってくることになります。
しかし、当時と違う点はありますので、その点も説明をしておきます。
- 利上げ前から株価は下落していた(利上げを織り込んでいた)
- 失業率は低水準にあり、労働市場は堅調
- 個人消費はそこまで落ち込んでいない
株価が下落し始めたのは2021年11月からで、実際に利上げが始まったのは、2022年3月からなので、株価の下落がかなり速いことがわかります。
株式市場は上昇するインフレ率を見て、利上げを早期に織り込みにいったためと考えられます。
もしかすると、すでに景気後退を織り込んで今の株価水準で水平飛行をする。。。ということもなくはないかと思います。
2つ目の失業率ですが、2022年の失業率の水準は、過去の推移を見てもかなり低水準にあることがわかります。失業率が低いということは、収入がある人が多いということなので、経済にとってはプラスになります。
3つ目ですが、アメリカのGDPの7割を占める個人消費は、低下傾向になるものの、依然として節目の100を上回っており、景気を下支えしてくれることが期待できます。
結論
これまでの分析を考慮すると、今後のシナリオは以下となります。
インフレピークアウト後、株価は一時的に反発するが、今後も利上げを継続していく見通しで、これにより企業業績が悪化することが予想される。そのため株価は再び下落し、ゆくゆくはリセッション入りする。
とはいえ、個人消費や労働市場の悪化が進むと、早期の利下げもあり得るので、それを好感して株価が反転上昇することも想定されます。
なので、今後発表される消費者信頼感指数や雇用統計等のデータを見た上で、株価のボトムを探っていきたいですね。
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