2022年6月現在、世界的に急速にインフレが進んでおります。
各業界、インフレに苦しむ中、元気なセクターがあります。
それは今回取り上げる「商社」です。
2021年夏場あたりからインフレが進み始めましたが、少し遅れて2021年10月あたりから、商社の株価が上昇し始めました。
他の業界がインフレに苦しむ中、なぜ商社は業績が好調なのか、その理由を解説します。
また、商社の収益モデルや5大商社の特徴について分析・解説していきたいと思います。
最後までご覧いただけたら幸いです。
商社とは
Wikipediaによると、
商社とは、輸出入貿易ならびに国内における物資の販売を業務の中心にした、商業を営む業態の会社である。(引用元:Wikipedia)
と記載されております。
要するに、商社は売り手と買い手で、円滑に貿易できるように間を取り持つ業種であり、卸売業の部類に入ります。
そのような業態であるため、自社商品はありません。
商社は大きく分けて、2種類の分野に大別することができます。
広い分野の商品を取り扱う総合商社と特定分野の商品を取り扱う商社を専門商社と言います。
総合商社・・・幅広い分野の商品を取り扱う商社のこと
具体銘柄・・・三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日
専門商社・・・特定分野の商品を取り扱う商社のこと
具体銘柄・・・日鉄物産(鉄鋼系)、マクニカ・富士エレHD(半導体系)、長瀬産業(化学系)、三菱食品(食品)、メディパルHD(医薬)
商社の収益モデル
商社の収益源は主に2種類挙げられます。
- トレーディング⇒利ざや、仲介手数料
- 事業投資⇒株価評価益、配当、投資先からの利益分配
それぞれの詳細について、以下で解説します。
トレーディング

トレーディングとは、安く売って高く売る卸売のことを指します。
商社は売り手と買い手の間を取り持ち、商品を安く仕入れて高く売る利ざやで利益を上げています。
また、売り手と買い手の間を仲介し、双方にとって最適な取引となるようお手伝いし、取引成立後にその手数料を受け取ることで利益を上げています。
商社を仲介するメリットとして以下の3点が挙げられます。
- 物流
- 金融
- 情報
以後に解説していきます。
〇物流機能
売り手が買い手に商品を提供するとき、売り手が直で輸送手配をするのは面倒だと思います。
その時に商社が間を取り持つことで、最適な輸送手段を提供してくれます。

例えば、海外のお客様に対して、いち早く提供したい場合は航空機による輸送、
また、提供スピードは気にせず、輸送コストをできるだけ抑えたい場合は船舶による輸送など
条件に応じて最適な輸送手段を提案してくれるというメリットがあります。
〇金融機能
金融面でも建て替えをしてくれるというメリットがあります。

例えば、上記のようにトマト生産者が食品加工会社にトマトを提供するにあたり、金銭のやりとりについて、以下のように認識の違いがあったとします。
トマト生産者(売り手):売れた分のお金をすぐにでも入金してほしい。
食品加工会社(買い手):1か月後に支払いたい
このような場合に、商社が仲介することで、双方の望みをかなえることができます。
食品加工会社が支払うお金を商社が建て替えてトマト生産者に支払います。そして、1か月後に立て替えた分のお金を食品加工会社から回収します。こうすることで、双方の取引が円滑になります。
〇情報機能
商品を売りたいとなったとき、売り手自らが、買い手を探すのは大変面倒ですし労力を伴います。
そういうときに商社を仲介させることで、最適な買い手を紹介してくれるというメリットがあります。
商社は多数の企業と取引をしているので、多くの顧客情報を所持しています。
この情報を用いることで、目的にあった企業を提案することができます。
商社にお願いすることで、買い手を探す手間を省けたり、より利益の出そうな会社を提案してくれるなどのメリットがあります。
事業投資

事業投資とは、成長企業に対して、ヒト・モノ・資金等、あらゆる投資を行い、企業の成長をサポートし、
投資先が上げた利益の一部を受け取ったり、株価上昇分の評価益や配当金を受け取ることで、収益を得る事業となります。
現状、商社の利益は事業投資の割合が多くなっており、こちらの事業が主力となっております。
取扱う商品について
商社が取り扱う商品として、大まかに資源分野、非資源分野の2種類があります。
資源分野は金属やエネルギー関連のことを指し、非資源分野は繊維、食料、金融、自動車、化学品などを指します。
商社は川中産業?川上産業?

商社は卸売業の役割を担っているので、一見川中または川下産業に位置すると考えられがちですが、商社は資源権益を有していることが多いため、どちらかというと川上産業に分類されます。
したがって、インフレにはめっぽう強い業種となります。
5大商社について
5大商社とは、総合商社の中で時価総額トップ5の商社のことを指します。
具体的には、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の5社です。
これらの商社にも、それぞれ特徴がありますが、共通して言えることは、インフレに強いということです。
2021年から2022年にかけて、世界的に急速にインフレが進んでおり、資源価格が高騰しております。
それを追い風に5大商社いずれも過去最高益をたたき出しました。

上記グラフは2021年度の当期純利益を事業毎に分類したものになります。
確認いただくと、いずれの商社も金属(資源)、エネルギー・化学が利益の半分近くを占めており、利益を大きく押し上げていることが分かります。
これがインフレに強いと言われる理由です。
特に三井物産は、資源分野の事業比率が高いため、資源価格孤島の恩恵をモロに受ける形で、利益を大きく伸ばし、業界トップランナーの三菱商事とほぼ同水準の利益をたたき出しました。
このように、資源価格高騰の恩恵を大きく受ける企業、恩恵が少ない企業とあり、5大商社の中でも違いがあります。
ですので、それぞれの企業の特徴を把握しておく必要があります。
各商社の特徴について、以下で解説していきたいと思います。
三菱商事
財閥の三菱グループの会社で、国内最大手の総合商社となります。
三菱商事は三菱グルーブの一角であり、その三菱網を使って幅広い事業を展開しており、5大商社の中でも非常にバランスの取れた事業比率となっているのが特徴です。
事業について
2021年度の当期純利益を事業別にまとめた円グラフを以下に示しています。

利益を大きく生み出しているのが、金属資源、天然ガス、自動車・モビリティー、食品産業です。
具体的な内容を以下にまとめましたので、ご参考ください。
金属資源・・・原料炭、銅、鉄鉱石に強み。
天然ガス・・・天然ガス事業があるほど、力を入れている。
自動車・モビリティー・・・三菱グルーブ傘下の三菱自動車の商社としての強み
食品産業・・・サケ、マス養殖事業に強み
三井物産
財閥の三井グループの会社で、国内では三菱商事と肩を並べる大手総合商社となります。
資源・エネルギー分野に強みを持ち、総合商社でもトップの権益、事業基盤を誇ります。
事業について

利益を大きく生み出しているのが、金属資源、エネルギー、機械・インフラです。
具体的な内容を以下にまとめましたので、ご参考ください。
金属資源・・・鉄鉱石・石炭に強み。
エネルギー・・・原油、天然ガスに強み。
機械・インフラ・・・電力設備、ガス配給、自動車、産・建機、鉄道など幅広く手掛けている
伊藤忠商事
繊維部門に強みをもち、ファミリーマートを傘下に持つ国内3位の総合商社となります。
この会社は、繊維、食料、住生活・情報、機械などの非資源分野に強みを持ちます。
事業について

利益を大きく生み出しているのが、金属、エネルギー、住生活、情報・金融、機械となります。
具体的な内容を以下にまとめましたので、ご参考ください。
金属・・・鉄鉱石、石炭、ウラン、アルミに強み。
エネルギー・化学品・・・原油、天然ガス、有機化学品、無機化学品に強み。
住生活・・・北米建材、紙パルプ、天然ゴム・タイヤの物流や、建設、不動産開発に強み
情報・金融・・・ITソリューション事業 、インターネット関連サービス、リテールファイナンス事業、法人向けファイナンス事業、リテール保険事業等で強み
住友商事
財閥の住友グループの会社で、メディアデジタル事業に強みをもつ総合商社となります。

利益を大きく生み出しているのが、資源・化学品、金属、生活・不動産、メディア・デジタルとなります。
具体的な内容を以下にまとめましたので、ご参考ください。
資源・化学品・・・銅、石炭、鉄鉱石、原油、ガス、基礎化学品、電子材に強み。
金属・・・鋼管、鋼材、輸送機材等を取り扱う。
生活・不動産・・・リテイル関連事業、ヘルスケア事業、建設不動産業
メディア・デジタル・・・日本最大のケーブルテレビ事業であるJ:comを傘下に持つ
丸紅
芙蓉グループの会社であり、穀物に強みを持つ総合商社となります。
逆にエネルギーの取扱いが少ないのも特徴の一つですね。

利益を大きく生み出しているのが、金属、アグリ事業、食料、エネルギーとなります。
具体的な内容を以下にまとめましたので、ご参考ください。
金属・・・銅、原料炭、鉄鉱石、アルミニウムに強み。
アグリ事業・・・農業資材リテイル事業に強み。
食料・・・小麦や大豆やトウモロコシ等の穀物、砂糖、コーヒーなどに強み
エネルギー・・・石油、天然ガス、新エネルギー(水素、アンモニア等)等を取り扱う
まとめ
商社について、解説していきました。
現在、世界的なインフレにより、世界経済は景気後退期に移ろうとしております。しかし、その中でも商社は過去最高の収益をたたき出し、インフレを追い風にばく進中となっております。
しかし、今後は世界的な金融引き締めによって、インフレ率は低下していくと考えられ、商社にとっては厳しい状況が待ち構えています。
商社へ投資する際は、資源価格の動向と世界の金融政策を確認して、投資判断していきたいですね。
最後に
他業種の分析も行っています。
よろしければ、そちらの方もご確認いただけたら幸いです。





コメント