2022年3月のFOMCにて、FRB(連邦準備制度理事会)は利上げすることを正式決定しました。
また、年内のFF金利を1.75~2.00%に引き上げることも示唆しており、
今年予定されている残りのFOMC(連邦公開市場委員会)にて、毎回利上げすることが予想されております。
また、今回のFOMCでQT(量的引き締め)について、早ければ次回のFOMCから実施する可能性があることを示唆しております。
QTとはどのようにして行われるのでしょうか。
そして、QTが実行されることで、市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
そのあたりを解説していきたいと思います。
QTとは

QTとは、英語でいうと「Quantitative Tightening」と表記され、その頭文字をとったものになります。
「Quantitative」は日本語で「定量的」、「Tightening」は「Tighten」という動詞に「ing」をくっつけて動名詞化した英語であり、「引き締め」という意味です。
直訳すると、「定量的引き締め」となり、要するに「一定量ずつ引き締める」ことになります。
量的引き締めという言葉を聞きますが、「量的」というのは「定量的」という意味だったんですね。(知らなかったです。。。)
ちなみに、金融用語で「QE」という似たような言葉があります。
英語でいうと「Quantitative Easing」と表記され、直訳すると「定量的緩和」です。
QEとQTは文字列でみると似ていますが、意味は正反対の言葉となります。
QTとQEの違い
QTを理解するには、まずQEについて理解する必要があります。

前述でも述べたように、QEは「量的緩和」という意味ですが、具体的な実施内容として、中央銀行が新たに発行した通貨で、短期国債や住宅ローン担保証券などを購入します。
そもそも、民間の銀行とは違い、中央銀行はお金を発行できる唯一の銀行です。
新たにお金を発行し、そのお金でこれらを購入することで、市場に資金を投入し、景気の下支えします。これがQEの目的になります。

上図はFRBのバランスシートの残高推移を示したものになります。
コロナショック以降に大幅に国債等の買い入れにより、大幅に資産が増加していることが分かります。
また、短期国債を大量に購入することで、金利を低下させ、企業の積極的な設備投資や消費を促すメリットもあります。
QEを理解した上で、QTの話に戻します。

QTとは 、ずばりQEの逆のことをします。
具体的には、中央銀行が保有している短期国債や住宅ローン担保証券を民間の銀行に売却したり、民間の銀行から償還してもらいます。
これらを売却または償還することで、市場に流動している資金を回収し、過熱した景気を冷ます狙いがあります。
また、短期国債を売却することで、金利を上昇させ、設備投資や消費の抑制を図ります。
○QE(量的緩和)
- 中央銀行が新たに発行した通貨で、短期国債や住宅ローン担保証券を購入
- 短期国債を大量購入することで、金利を下げ、企業の積極的な設備投資や消費を促進
○QT(量的引き締め)
- 中央銀行が保有している短期国債や住宅ローン担保証券を売却
- 短期国債の売却により、金利が上昇し、企業の積極的な設備投資や消費を抑制
QTの実施方法にも種類がある

QTの実施方法には、3種類あります。
- 償還分の資産の一部を再投資に回して、緩やかに資産を削減する。
- 債券が満期を迎えて償還され、その償還分だけ資産を削減する。
- 満期を迎える前に資産を売却する。
資産の削減速度が速いほど、市場への影響が大きくなります。
したがって、1<2<3の順番で市場へのインパクトが大きくなります。(3が市場へのインパクトが大きい)
ちなみに、前回のQT局面では、1番目が選択され、2017年10月~2019年7月の期間で、およそ4兆5,000億ドルから3兆7,000億ドルへと資産削減を行いました。

尚、このとき株価は上下の値幅こそ大きいですが、よこよことした展開のように見えます。
- 償還分の資産の一部を再投資に回して、緩やかに資産を削減する。
- 債券が満期を迎えて償還され、その償還分だけ資産を削減する。
- 満期を迎える前に資産を売却する。
QTによるマーケットへの影響

一般的に、QTが実施されると、株式市場にとっては逆風になります。
前述で説明しましたように、QTを実施すると、市場に流通しているお金を回収されてしまいます。
市場に流通しているお金が回収されてしまいますと、株式への資金流入が減少しますので、一般的には株価は上がりにくい傾向にあります。
債券市場に与える影響を考えてみますと、今まで買い支えていたFRBという存在がいなくなり、
逆に売り手となるため、以前のような買い手は見つかりません。
そうなりますと、債券価格が低下し、相対的に利回りが上昇します。
上記をまとめますと、以下となります。
- 株式市場への影響 ⇒ 株価は下がりやすい
- 債券市場への影響 ⇒ 債券価格が下落しやすい
- 金利への影響 ⇒ 上昇しやすい
まとめ

今回はQTについて解説しましたが、株式市場にとっては逆風になりそうです。
とはいえ、現状の高インフレを抑制しないと、経済に大きな影響を与えることになるので、仕方のないと思います。
前回のQT局面では、かなりゆっくりとしたペースで実施されたので、株式市場には大きな影響はなく、よこよことした展開となりました。
しかし、今回は高インフレを抑制しないといけないので、かなり強い内容となることが予想されます。(あくまで個人の見解ですが)
現状、早期の実施としか示唆されておらず、どれくらい額をどれくらいのペースで実施するのか、具体的な内容まで開示されておりません。
内容次第では、さらに調整することになると思いますので、次回のFOMCは注目しておきましょう。
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