FRBが高インフレに対応するために積極的な利上げやバランスシートの縮小(QT)をすることを示唆したことで、市場はリスクオフムードとなり、株価は年初から軟調な動きとなっております。
さらに、2022年3月には景気後退のシグナルとなる逆イ―ルドが発生し、景気は後退局面へと移りつつあります。

景気拡大期から景気後退期へ景気移行する中で、セクターローテーション(上図)により資金の流入先が変わる可能性があります。
その資金流入先として、ディフェンシブセクターが挙げられます。
今回は、そのディフェンシブセクターについて、特徴や解説を行います。
ディフェンシブセクターとは
ディフェンシブセクターとは景気の動向に業績が左右されにくいセクターのことをいいます。
一般的には、景気後退局面になると、個人消費が鈍化するので、企業の売上が減少します。そうすると企業は配当や自社株買いに対して消極的になり、株価は下落しやすくなります。
しかし、ディフェンシブセクターは景気の動向に左右されにくく、安定した収益を確保することができますので、株価は上昇しやすくなります。
ディフェンシブセクターの具体的な業種としては、生活必需品や医薬品、電力・ガス、鉄道、通信などが挙げられます。
いずれの業種も、生活になくてはならないような製品・サービスを提供しており、安定した収益を見込めます。
例えば、ティッシュや調味料、薬、オムツのような育児用品も生活には必要なものであり、無くてはならないものです。
電力やガスは言わずもがな、日々の生活を送る上で必須級の生活インフラです。
鉄道も通勤・通学の移動手段としてなくてはならないものですし、通信も友人や家族との連絡や、地図の確認、SNS、ゲームなど、生活に必要なものになります。
以上のように、日々の生活に必要なモノやサービスで、安定的は収益を上げているので、景気後退期でも安定した収益を確保できるディフェンシブセクターは、他のセクターと比べて魅力的になります。
ただし、注意してほしいのが、収益が安定している⇒業績が良いという訳ではありません。利益に見合った株価かどうかを確認しておく方がよいでしょう。
●ディフェンシブセクター
- 業種は生活必需品や医薬品、電力・ガス、鉄道、通信を指す
- 安定した収益性
- 景気後退局面に強い
2022年の年初来パフォーマンス
日本と米国のディフェンシブセクターの2022年のパフォーマンスについて、まとめました。
2022年の初めは、FRBが積極利上げを示唆したことで、長期金利が上昇し、株式市場は下落しました。世の中は景気拡大期から金利上昇期へ移行する段階です。
ハイテクやグロース系には厳しい時期に入りましたが、ディフェンシブセクターはどのようなパフォーマンスなのか、確認していきましょう。
米国市場のディフェンシブセクターパフォーマンス
2022年初からの米国指数及びETFのパフォーマンスを表にまとめました。

ハイテク主体で構成されるナスダックは、長期金利の急上昇に伴い、年初から-18.91%と売りたたかれています。やはり高PER銘柄は長期金利の影響を強く受けていることがわかりますね。
長期金利の上昇でハイテクが売られる理由については、以下の記事で解説しておりますので、よろしければこちらをご確認ください

ダウは、年初から-7.58%とマイナスですが、ナスダックよりは下げが限定的です。これはダウの構成銘柄が比較的分散されているためです。
一方、ディフェンシブセクターを確認していきますと、各指数よりもパフォーマンスが良いことが分かります。
ヘルスケア:VHT

VHT(Vanguard Health Care Index Fund ETF)はヘルスケア銘柄で構成されたETFになりますが、年初から-6.77%とディフェンシブセクターですが、マイナスとなっております。年末年始の時点でかなり高水準にあったので、パフォーマンスとしては、悪いですが、直近は右肩上がりでした。
公益:VPU

VPU(Vanguard Utilities Index Fund ETF)は電力やガスなどの公益銘柄で構成されたETFになりますが、年初から+4.05%と指数よりも大きくアウトパフォームしております。
生活必需品:VDC

VDC( Vanguard Consumer Staples Index Fund ETF)は生活必需品銘柄で構成されたETFになりますが、年初から+2.24%と指数よりもアウトパフォームしております。
日本市場のディフェンシブセクターパフォーマンス
2022年年初からの日本の指数と各業種代表銘柄のパフォーマンスを表にまとめました。
日経平均株価は、年初から-7.5%とマイナスとなっております。

生活必需品:花王

生活必需品の代表格である花王は、年初から-14.69%とマイナスとなっております。そもそも花王は、主力製品である化粧品の売り上げが、コロナの影響で減少しているので、景気の影響というよりはコロナの影響が強いです。
医薬品:武田薬品工業

医薬品の代表格である武田薬品工業は、年初から+16.34%と日経平均よりも大きくアウトパフォームしております。もともと高配当銘柄の代表格でもありますし、去年末に大きく下落したことで、かなり割安が意識され、資金が入っていることが分かります。
電力:関西電力

電力セクターから関西電力をピックアップします。年初から+10.91%と日経平均よりも大きくアウトパフォームしております。
ガス:大阪ガス

ガスセクターから大阪ガスをピックアップします。年初から+10.51%と日経平均よりも大きくアウトパフォームしております。
鉄道:東海旅客鉄道

鉄道から東海旅客鉄道をピックアップします。年初から+5.72%と日経平均よりもアウトパフォームしております。
通信:KDDI

通信はKDDIをピックアップします。年初から+24.13%と日経平均よりも大きくアウトパフォームしており、かなり資金が流入していることが分かります。
2022年初来パフォーマンスは、指数よりも大きくアウトパフォームしている
ディフェンシブ銘柄には高配当株が多い

ディフェンシブセクターの特徴として、配当が高い傾向にあります。
先ほど挙げた武田薬品工業やKDDIは高配当銘柄の代表格です。
また、関西電力は配当利回り4%を超えておりますし、花王は連続増配の日本記録を更新中です。
やはり、景気の山谷に左右されない安定した収益が、株主還元率を高くしているのでしょうね。
まとめ

景気後退期でディフェンシブセクターが強い理由について解説しました。また、2022年初来のパフォーマンスを確認した通り、すでにディフェンシブセクターには資金が入っていることが分かります。
この株価が高いかどうかは、
しかし、何度も申し上げております通り、収益が安定しているということは。大きくは下落しないものの、大きく上昇することもありません。
現状の株価が過去と比べて、高値圏にあるかどうか、確認した上で、投資判断した方が良いと考えます。
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