このシリーズも第3弾となります。今回紹介するのは「鉄鋼株」です。
鉄鋼とは、その名の通り鉄鋼材を扱う分野になります。ただ、鉄鋼材を生産するのにも種類があったり、生産方法に違いで影響する指標が異なったりします。
今回も、鉄鋼株に影響を及ぼしそうな指標や、特徴、強みについて、解説していきたいと思います。
鉄鋼株の収益モデル

鉄鋼株は、鉄鉱石や鉄スクラップなどの原料から製鉄を行い、製鋼や鋼材製品を生産して、収益を上げております。
その鋼材の生産方法にも種類がありますが、代表的なものとして、以下2種類が上げられます。
- 高炉
- 電炉
それぞれの特徴について、解説していきたいと思います。
高炉
高炉とは、鉄鉱石から鉄を取り出すための炉のことです。
高炉の導入には、広大な敷地と大規模設備が必要となり、莫大なお金を要します。
原材料は鉄鉱石を使い、燃料としてコークスを使用して、高熱で鉄鉱石を溶かし、鉄を製造しています。
コークスとは石炭を蒸し焼きにして抽出した炭素の塊のことで、通常の石炭よりも高い発熱量を得られます。ですが、それと引き換えに、コークスを燃焼させる過程で、大量の二酸化炭素を排出する。
鉄鋼業は国内業種でもトップの二酸化炭素排出量(全体の約30%)を誇り、脱炭素社会に向けて、いかに排出量を抑えるかが課題となっております。
一方で、高炉は生産過程で発生する副生ガスをもとに、火力発電をすることができます。ですので、自分で電力を賄えますので、電気代の値上げの影響を受けません。
国内で高炉による鉄製造を行っている代表的な会社は、日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日鉄日新製鋼が挙げられます。
●高炉の特徴
- 原材料は鉄鉱石
- 燃料はコークス
- 設備が高額かつ広大な敷地が必要
- 製造過程で二酸化炭素が大量に排出される⇒脱炭素化が課題
- 自社で火力発電が可能⇒電力を自社で賄える
電炉
電炉は電気を使って、鉄スクラップを溶かして、鉄を製造する炉のことを言います。
電炉は高炉に比べて設備費、消費エネルギーが少なく、二酸化炭素の排出量も少ないことが特徴です。
二酸化炭素の排出量は、高炉の最大1/125程度と言われていため、環境への影響は少ないと言われています。
一方、電炉は、電気を使って鉄を製造するので、電気代が上昇すると製造コストの上昇に繋がります。
ですので、電気代の動向を注視しておく必要があります。
電炉にて製造を行っている会社として、東京製鐵、JFE条鋼(JFEグループ)、共栄製鋼が挙げられます。
●電炉の特徴
- 原材料は鉄スクラップ
- 電力により鉄を製造
- 電気代の変動が製造コストに寄与
- 二酸化炭素の低排出(高炉と比べて)
鉄鋼株の特徴

鉄鋼株の特徴や強みについて解説します。
中国経済

鉄鋼株は中国の経済にすごく依存しております。
以下の図は、世界の鉄鋼需要を示したものになります。世界の鉄鋼需要の内、およそ半分が中国となっています。
中国は旺盛な公共・インフラ工事を背景に、鉄鋼の需要が凄まじく、長年世界トップに君臨しております。
それゆえに、中国の景気が良ければ、鉄鋼需要は多くなり、景気が悪ければ、需要は少なくなる傾向にあります。
ただ鉄鋼業界全体としての需要はあり、概ね右肩上がりを続けておりますので、依然として成長はありそうです。
ちなみに、日本は世界3位になっていますね。
日本は産業機械や自動車などの鉄鋼需要が多く、世界的に見ても、多い方であることがわかります。

鉄鋼は高配当株が多い

鉄鋼株は昔から低PER銘柄として知られています。それゆえに、配当利回りが高くなりやすく、高配当株の位置づけとなります。
鉄鋼株の代表銘柄の配当利回りをまとめました。
見て頂きますと、どの銘柄の配当利回りはプライム市場上場企業の平均を大きく上回っております。
また、平均的にPERが低いことから、金利上昇局面に強いのが特徴です。
鉄鋼株は景気敏感株

先ほど述べましたように、鉄鋼材の用途は住宅や公共、自動車などに使用されます。これらは景気が良い時には需要が増え、景気が悪い時には需要が少なくなりますので、鉄鋼株は景気敏感株となります。
原油価格

一般的に原油価格が上がると、輸送コストが上昇するため、マイナス影響となります。
しかし、高炉と電炉でさらに原油価格上昇による影響度が異なります。
電炉は電力を元に動かしておりますので、電気代が上昇すると製造コストが増大します。原油価格が上昇すると電気代も上昇するので、電炉を使っているメーカーには大きな影響があります。
一方、高炉は自ら火力発電をしているので、電気代上昇による影響は限定的であるため、電炉に比べて原油価格上昇の影響は少ないです。
むしろ、高炉は石炭価格の影響が大きいので、そちらの動向を注視しておく必要があります。
■原油価格の高騰
⇒物流の観点から基本的にマイナス影響。しかし高炉・電炉で影響度合いに違いあり
●電炉
電気料金の引き上げにつながるので、製造コストへの影響が大きい⇒影響大
●高炉
生産工程上、原油を必要としない⇒影響小
※原油価格より石炭価格の影響が大きいので、そちらに気を配る。
素材価格

一般的に素材価格が上昇すると会社にはマイナス影響となります。
また、高炉と電炉でそれぞれ異なる素材を使用しておりますので、確認する素材価格も異なります。
高炉は、鉄鉱石を原料に鉄を製造するので、鉄鉱石価格を確認する必要があります。
電炉は、鉄スクラップを原料に製造するので、鉄スクラップ価格を確認する必要があります。
各素材の価格推移をまとめているサイトを添付致しますので、ご参考ください。
●鉄鉱石価格推移
●鉄スクラップ価格推移
為替
鉄鋼業界において、為替の影響は、あまりありません。
円安によって輸出はより多くの円を得ることができますが、海外から輸入する素材価格や燃料コストが上昇する方向となるため、相殺されてしまいます。

強いて言えば、鉄鉱石や鉄スクラップなどの素材を会社に在庫として置いている間に、円安が進行した場合は、鋼材を輸出する際に為替の恩恵を受けることができます。
ですが、量はそんな多いものでもないので、基本的には為替の影響は、気にしなくて良いかと思います。

まとめ

今回は鉄鋼株について、紹介しました。
このところ、中国の経済指標が悪化しつつあり、景気減速が懸念されております。
一方、世界的にインフレが進行し、世界各国が利上げを進めております。金利上昇局面では鉄鋼株は強くなりやすいので、あらゆる情報を精査した上で、投資判断していただければと思います。
終わりに
他業種の分析も行っておりますので、もしよろしければ、そちらもご確認ください。
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