株式投資家向けのテレビやYouTubeなどで、米国株の相場振り返りをする際、
「本日ナスダックは下落。米国の長期金利が上昇したことで、ハイテク株を中心に売られました。」
というのを耳にタコができるくらい、このワードを良く聞きました。
なんとなく、長期金利上昇すれば、ハイテク株が顕著に下落するということは、理解しておりましたが、
長期金利が上昇することで、どのような影響があり、ハイテク株が売られるのか、理解しておりませんでした。
ここでは、長期金利が上昇すると、なぜハイテク株中心にが売られるのか、詳しく解説していきたいと思います。
ハイテクについて

ハイテク株とは
その名の通り、高度な技術力を持った企業のことを指します。具体的には、デジタルや精密機械、電子部品などに関する銘柄です。
日本の銘柄でいいますと、東京エレクトロンや村田製作所、ソニーやパナソニックなどが挙げられます。
米国の銘柄では、アップルやアマゾンをはじめとするGAFAM、テスラ、エヌビディアなどが挙げられます。
ハイテク株の特徴

ハイテク株の特徴としては、PERが高いことが挙げられます。
そもそもPERとは、EPS÷株価で表される割安さを示す指標で、日本語では株価収益率と表現されます。
PERは、数値が高いほど割高となり、数値が低いほど割安となります。

上記は、米国の有名な会社をハイテク・非ハイテクに分けて、表にまとめたものになります。
見て頂くと、非ハイテクのPER平均値が18.2に対して、ハイテクのPER平均値が32.3と高く、割高であることが分かります。
ハイテクやグロースは一般的にPERが高いことで知られていますが、これは将来の利益成長も織り込んで投資している人が多いため、PERが高くなりやすい傾向にあるようです。
・ハイテクやグロースはPERが高い
なぜ高PERが金利上昇に弱いのか

ここでようやく本題に入ります。
ハイテクはPERが高いことが前述で分かりました。なぜハイテク株が金利上昇に弱いのでしょうか。それはPERが高いためです。
ではなぜ、PERが高いと長期金利の上昇に影響するのでしょうか。
それは株式益回りで考えると整理することができます。
株式益回りとは、EPS(1株当たりの当期純利益)÷株価で表され、年間の当期純利益が株価の何%に相当するかという指標であり、PERの逆数になります。企業へ投資した際の利回りがいくらなのかというイメージになります。
上記を踏まえると、ハイテク株は基本的にPERが高いので、株式益回りは低くなります。

ここで、簡単な例を交えつつ、説明していきます。
架空の株式会社のA社とB社があるとします。
それぞれの会社のPERは、A社が20倍、B社が100倍となっていたと仮定したとき、それぞれの会社の株式益回りは、A社が5%、B社が1%となり、A社の方がリターンが大きく、魅力的であることが分かります。
ここで、長期金利が0→1%に上昇したとします。
そうすると、A社は長期金利に対して、高い益回りを確保している為、魅力度は落ちないですが、B社は長期金利と同等の益回りとなってしまい、魅力度が下がってしまいます。
魅力度が下がると、株式は売られてしまいますので、株価が低下するということになります

逆に言うと、長期金利の上昇局面では、PERが高い会社は売られるので、相対的にPERが低い(益回りが高い)会社の魅力度が増します。そのため、バリュー株に資金が移る傾向にあります。

以上の図をご覧ください。
この図は縦軸がグロース指数をバリュー指数で割った指数となっており、上に行くほど、グロースが強く、下に行くほど、バリューが強くなります。
2020年の3月あたりに、FRBは異次元金融緩和でゼロ金利政策を打ち出しておりました。
低金利の場合は、益回りの低いグロースでも債券より魅力的になりますので、図のように右肩上がりとなり、グロースの方が強いことが分かります。
一方、2022年1月あたりから、金融引き締めが意識されるようになり、長期金利が大きく上昇し始めました。この時はグロース/バリュー指数が下落しており、益回りの低いグロースよりも、バリューが強くなっていることが分かります。
◎金利上昇時
・益回りの低いハイテクやグロース株は、低リスクで利回り良いの債券よりも魅力度が低くなるので、売られる
・益回りの高い非ハイテク株は、ハイテクやグロース株の魅力度が低くなることで、相対的に魅力度がアップし、買われる
まとめ

長期金利の上昇局面で、なぜハイテク株が売られやすいのか解説をしました。
長期金利が上昇するとハイテク株が売られるという考え方は間違いではないですが、厳密には、PERが高い(益回りが低い)会社が売られるという認識が正しいようです。
現在、長期金利がみるみる上昇しており、ハイテク株やグロース株が売られております。
このあたりの知識があれば、今後の戦い方も見えてくるのではないでしょうか。
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