2022年7月現在、ドル円は139円をつけており、歴史的な円安が進んでおります。
円安が進行した主原因として、国内外の政策金利差が挙げられますが、その他の原因として、貿易赤字が挙げられます。
2021年8月から2022年6月現在まで、日本は貿易赤字となっております。
それもあって、ドル円は円安基調が続いております。
なぜ、貿易赤字が円安を招いているのでしょうか。
今回は、貿易赤字が円安を招く理由について、解説していきたいと思います。
そもそも貿易赤字って何?

貿易赤字とは、日本の貿易収支がマイナスのことを指します。
そもそも貿易収支は、物の輸出入の収支のことをいい、日本の輸出額と輸入額の差額で、貿易赤字か貿易黒字かがわかります。
輸出額が輸入額を上回っている場合は貿易黒字、輸入額が輸出額を上回っている場合は貿易赤字となっています。
この貿易収支は、毎月1回財務省から発表される貿易統計にて開示されます。
以下のURLにて、貿易統計を確認できますので、ご確認ください。
なぜ貿易赤字となっているのか

前述でも記載したように、日本は貿易赤字が続いておりますが、なぜ貿易赤字となっているのでしょうか。
その理由は3点あり
- コモディティ価格の上昇
- 円安
- 半導体不足
が挙げられます。
コモディティー価格の高騰

新型コロナウイルス感染拡大によって停滞していた経済活動が徐々に再開し、原油需要が高まったことで、エネルギー価格が上昇しました。
また、経済活動再開に伴う需要の増加や物流網の混乱による供給の減少もあり、コモディティー価格を押し上げました。
加えて、ロシアによるウクライナ侵攻により、供給不安も相まって、原油価格は歴史的な高騰となりました。
日本は資源に乏しいので、コモディティ価格の上昇の影響を大きく受け、輸入額が爆増します。
円安

円安は、原材料価格がさらに上昇しますので、輸入額が増加します。
そのため、貿易赤字の方向に働きます。
例えば、海外からトマトを輸入する時、トマト1個1ドルで購入したとします。
為替レートを1ドル=100円の時と1ドル=120円で比較した場合、トマト1個に対し、20円分余分に支払う必要があります。
すなわち、円安が進行すると、海外に支払うお金が増えてしまいますので、円安は貿易赤字要因となってしまいます。
半導体不足

経済活動の再開で設備投資が活発化しておりました。そのため、半導体が不足しており、世界的な問題に発展しております。
日本の主力産業である自動車も、半導体不足により、減産を余儀なくされました。
日本の主力製品には、多くの半導体が使用されているので、半導体不足は、日本の輸出額を減少させる要因となります。
なぜ貿易赤字で円安となるのか
ここからが、本題です。
貿易赤字になると、なぜ円安になるのでしょうか。順を追って説明していきます。
貿易赤字ということは、つまり輸入額が輸出額を上回っているという状況になります。
輸入額の方が多いということは、海外から原材料や製品を購入した金額が多いということなので、
海外にお金を支払う額が多くなります。
海外にお金を支払う際は、外貨で支払うので、円を外貨に換金する必要があります。
円を外貨に換金するということは、すなわち、円を売って外貨を買うということになりますので、
円安が進行するということになります。

実際に、為替と貿易収支の関係をグラフを用いて確認していきましょう。
以下のグラフは、コロナ前の2019年10月から2022年6月までのドル円と貿易収支の関係を示したものになります。

貿易黒字に向かう2020年5月から12月にかけて、ドル円は円高方向に推移しています。
また、貿易赤字が始まった2021年8月から2022年6月にかけて、ドル円は円安方向に推移しました。
やはり、貿易収支とドル円には相関関係があることが、このグラフから読み取れますね。
尚、2022年2月から、急速に円安が進行しておりますが、これは日米金利差の拡大による影響が大きいと考えられます。
株価への影響は?
貿易収支が与える株価への影響について、分析及び考察していきたいと思います。
尚、分析対象は、日経平均株価とさせていただきます。
コロナ前の2019年10月から2022年6月までの貿易収支と日経平均株価の推移をグラフにまとめてみました。

2021年の8月から、日本の貿易収支は赤字が続いております。
貿易赤字となっている理由は、前述でも記載した通り、世界的な物価高騰により、日本の輸入額が増大したことで、貿易赤字となっております。
そこで、貿易収支と日経平均の関係を確認すると、両者の間には、相関性がみられず、貿易収支が与える株価への影響は、限定的と判断します。
貿易赤字は、日本のGDPを下げることになるので、本来株価を押し下げる方向に働きますが、今回はそのような傾向をこのグラフから読み取ることができませんでした。
なぜ、そのような傾向が得られなかったのか、私なりに考察した結果、以下の2点が原因と考えました。
- 日銀による金融緩和策
- 円安の進行
これらが影響していると考えます。
まず金融緩和策についてですが、この政策は市場にお金をばらまいて、経済を活性化させる金融政策で、日本は2016年からこの金融緩和を続けております。
この金融緩和策は、株価要因となるので、株価を下支えをしたのではと考えております。
2点目の円安ですが、貿易収支面ではマイナスに働くものの、日経平均に限ってはプラス要素に働くという考えもあります。
日経平均に採用されるような大企業は、基本的に海外に生産拠点を持ちます。
海外で上げた利益を日本円に換金する際、円安が進行しているほど利益が増えますので、
円安は大企業にとってはメリットになる面もあります。
このため、日経平均株価は思ったより、下落していないものと考えます。
まとめ
今回は、貿易収支と為替の関係について、解説しました。
貿易収支は、株価への影響は少ないものの、為替への影響は大きいです。
ですので、海外での収益が高い企業への投資は、この貿易収支を見ておきたいですね。
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